やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「大野さん、おはよう」
「……っ!」

 私より先に中森さんが振り向く。可愛らしい顔がさらに可愛くなった。私の知る中森さんはこんなに明るい表情が出来るのかと内心とても驚くほどだった。

 彼女の存在に気づいたのか新村くんがついでのように挨拶した。

「あ、聖子(せいこ)もおはよう」
「うん、おはよう。今日も格好いいね♪」
「……」

 中森さん。

 その声、本当に中森さんの声?

 どう考えても別人な声に私は耳を疑う。

 実家の母が電話や来客に対して話すときより違っていた。母も声だけなら二十歳年をごまかせるけど中森さんも将来その技が使えるかもしれない。

 というかすでに使いこなしているというべき?