やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 会社の最寄り駅から歩いていると中森さんが訊いてくる。

「もうすぐあんたの誕生日よね?」
「うん」

 バレンタインのポスターが貼られたケーキ屋の前を通る。美味しそうなチョコレートケーキに気後れするみたいに節分向けのロールケーキの広告が貼ってあって何だか微笑ましい。

 私の誕生日は二月四日だ。

「彼には何か言われた?」
「えっ、あっ、えーと」

 いきなり彼と言われてもそれが誰のことを指すのか私にはわからない。

 実は昨夜も電車の中やアパートで質問したのだが「そんなん言わなくたってわかるでしょ」と返されてしまい解明に至らなかった。

 あまりしつこくしても中森さんの機嫌を損ねるだけだし。

 うーん。