やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 ネズミおじさんと遭遇するのではないかと少しだけ警戒したが杞憂だった。

 あるいはどこかにいるのかもしれない。でも、私が気づかなかったのだからいなかったことにしよう。

 都合良く二つ空いたシートに私たちは座る。彼女の身体と触れた部分がやけに温かくて何だか嬉しくなった。

 自然、頬が緩む。

「ニヤニヤしないでよ、気持ち悪い」

 中森さんは相変わらず辛辣だ。

「だって、中森さんがあったかいんだもん」
「人をカイロみたいに言うな」
「……」

 こんなつっこみも慣れると心地良い。

 本当に私が男なら放っておかないんだけどなぁ。

 ああでもこれは同性からも好かれるタイプだよね。