やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 つっこもうとした私は中森さんの「さっきの言い間違いはスルーしなさい」オーラを察して口を閉ざす。

 うん、この人怖い。

 スマホをポケットに仕舞い、中森さんが立ち上がった。

「しょうがない、途中まで電車で行って後は歩くしかないわね」
「えっ」

 歩くって……歩けるの?

 何となくどえらい距離を歩きそうな気がするんだけど。

「ち、ちなみに途中の駅から中森さんのおうちまでどのくらいかかるの?」
「さぁ」

 彼女は肩をすくめた。茶色い蛇たち、ではなくて細かくウェーブした茶髪が大きく揺れる。

「朝までには着くんじゃない?」
「……」

 ええっ。