やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「あ、じゃあ」

 背中に嫌な汗を感じつつ私は提案する。

「良かったらタクシー代貸そうか??」
「あたし金の貸し借りはしないの」
「……」

 ぴしゃりと断られてしまった。

 私は苦笑いのまま硬直する。どうやら石化が始まったようだ。目を合わせたつもりはないけどそのあたりの設定は雑なのかもしれない。

 さようなら三浦部長。

 あなたのことが好きでした。

「うーん、この辺だとファミレスもないのね。丼バー……じゃなくてドリンクバーで一晩粘ろうかと思ったのに」

 中森さんがスマホを見つめながらつぶやく。彼女の声の後を追うように駅のアナウンスが鳴った。反対方面から来る電車がそろそろ到着するらしい。人数はそれほどではないが電車を待つ人が乗降口を示す位置に並びだす。

 てか丼バーって何?