やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「えっと」

 私は苦く笑んだ。

「もしかして、余計なことしちゃった?」
「別にもういいけど」

 中森さんが近くのベンチに腰を下ろした。はぁっと深くため息をつく。

 電車の中で酔っ払いに絡まれていた中森さんを助けるために私は彼女を連れて降車していた。

 結果、酔っ払いのネズミおじさんから逃れられた。うん、ここまでは良し。

 でも、そのせいで中森さんは乗り替えの最終電車に間に合わなくなってしまい、家に帰ることができなくなってしまった。

 電車で帰れないとなると、あとはタクシーかなぁ。たぶんもうバスも駄目だと思うし。

 でなければ誰かに迎えに来てもらうとか。