やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 しばらく私を睨むと中森さんは諦めたようにはぁっとため息をついた。茶色い蛇たち、じゃなくて細かなウェーブのかかった茶髪が大きく揺れる。

「ま、あんたのおかげで助かったわ。あのおっさんしつこくてうんざりしてたのよね」
「……」

 つい驚いてしまった。

 まさか中森さんがお礼を言うなんて。

 明日は大雪が降るんじゃ……。

「何よ」

 私が目を見開いていると中森さんは拗ねたように口を尖らせた。

「そんな顔しなくたっていいじゃない。あたしだって礼くらい言えるわよ」
「あ、いや、えっと」

 予想外のことすぎて頭がうまく回らない。