やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 帰宅途中の電車内で中森さんが酔っ払いのネズミおじさんに絡まれていた。

「ねぇねぇ、一緒に飲もうよぉ。いいじゃないのぉ。一軒だけ、一軒だけだからさぁ」
「ああもうっ、こいつしつこいっ!」

 中森さんが嫌がっているけどネズミおじさんは彼女のコートの裾を掴んでいるのでなかなか離れてくれない。それは私が助けに入っても変わらなかった。

 なお、ただでなくても気が立っている中森さんの怒りメーターは私の登場によりレッドゾーンに到達している。

 可愛いはずの顔も鬼の形相へと変じていた。とにかく目つきが怖い。気弱な人なら逃げ出してしまうんじゃないかな。

 細かくウェーブした茶髪が複数の蛇に見えてくる。うねうねって感じで茶色い蛇が沢山。あ、これだと目デューサか。もう人間じゃなくなってるね。レディースとか極道の女はどこ行っちゃったんだろ?