やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「中森さん」

 私が声をかけると彼女が険しい表情のまま振り向いた。本来は可愛いはずの顔が目つきの悪さで台なしになっている。やっぱレディースとか極道の女が似合いそうだな。

 口には出せないけど。

 中森さんが一瞬「あっ」というふうに目を見開きすぐに鋭いものへと戻す。

「大野まゆか」
「……」

 確かに私は大野まゆかだけど、そんな憎々しげに呼ばなくてもいいのに。

 あと、何気に拳を握ってますよね?

 それ、私じゃなくネズミおじさんに向けたほうがいいのでは?

「うん? そっちの子はおねぇちゃんのお友だちかい? ねぇねぇ、君も僕と飲もうよぉ」