やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 自分に対する自信なんて私にはない。私はまだまだだ。足りないものが多いし頑張っていかなければならないものも多い。

 今のままじゃ、駄目なんだよなぁ。

 いつの間にかぶり返していた暗い気持ちが嘆息となる。もういっそどこかに寄って酔い潰れるまで飲もうかな、と私は考え始めた。明日も仕事なので実行したらえらいことになるがどんどんそうしたい欲求が膨らんでいく。

 アパートの最寄り駅近くに居酒屋があったはず、と脳内で店の場所を検索していると若い女性の怒声が聞こえた。

「もういい加減にしてよ!」

 びっくりしてそちらへ顔を向けると見覚えのある女性が灰色のスーツを着たおじさんに絡まれていた。スーツの色や痩せてどこか陰気そうな印象があるところからネズミを連想してしまう。ネズミおじさんだ。

「いいじゃないのぉ、僕と飲もうよぉ」