やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 ガタンと電車が揺れて私はバランスを崩しかける。慌てて手を伸ばしてドアの横の手すりを掴んだ。

 手すりの金属質の冷たさと誰かがつけたであろう汗のややぬめっとした感触が私の不快感を刺激した。

 再度大きくため息。

 きっとこの息もその辺のおじさんとか酔っ払いの息と混じってしまうのだろう。私が汚されるようで気持ち悪い。

 ああ、意固地にならずに部長とタクシーに乗るべきだったかなぁ。