やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「うーん、困ったもんだね。一応訊いておくけど、出世に影響するかもって考えたことはないの?」

 私は武田常務を見た。

 真顔だ。口調は優しいのにむしろ怖かった。真っ直ぐに三浦部長を見つめ、その鋭い眼差しで彼を射貫こうとしている。

「考えたことはあります。ですが、私にはもう……」

 尻すぼみになって三浦部長の返事は最後まで聞き取れない。けれど彼にお見合いをする意思がないことはわかった。

 私は三浦部長へと視線を移す。

 よほど酔いが回りやすくなっていたのだろう、彼は顔が真っ赤だった。一瞬私と目が合って彼はさっと顔を背けてしまう。そのあからさまな私を避ける態度にちくりと胸が痛んだ。

 えっ、私ってそんなに嫌われてるの?

 思いの外ショックが大きくてその後の話は耳に入らなくなってしまった。