やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「か、からかうのはやめてください。私、可愛くなんてないですよ」
「おやおや照れているのかい? やっぱり可愛いねぇ」
「……」

 常務。

 そんなに褒めても何も出ませんよ。

 むう、と隣から声が漏れ聞こえる。私が目をやると三浦部長が口をへの字にしていた。心なしか不機嫌オーラが放出されているような気がする。

 これって拗ねてる?

 部長も常務に褒めて欲しかったのかな?

「まゆかの可愛さは僕が一番良く知っているのに」
「いらっしゃいませぇ!」

 三浦部長の声はまたも店主の声に紛れてしまう。

「部長、今何か言いましたよね」
「いや、空耳じゃないか?」

 不自然に目を逸らした部長の耳がさらに赤く染まる。今日は酔いの回るのが早いようだ。これ疲れのせいなのかもしれない。

 部長、毎日忙しいもんなぁ。