やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 ううっ、どうせアラサーのおばさんですよ。

 私は口を尖らせて部長を睨む。

「うん、怒ってるまゆかも可愛い」
「ありがとうございましたぁっ!」

 三浦部長のつぶやきは小さすぎて私には聞こえない。しかもほぼ同じタイミングで店主が店を出る客への挨拶をしたものだから余計に聞き取れなかった。

「えっと、今何て?」
「大野はもう少しその鈍感さをどうにかしような」
「はい?」

 私は首を傾げた。

 意味がわからない。

 あと、どうして顔を赤らめているんですか……ってそうでしたお酒が入ってますもんね。

「ふふっ、大野さんは可愛いなぁ」

 反対側から褒め言葉が飛んでくる。

 美形な常務の声に不意打ちされて私は不覚にも耳まで熱くなってしまう。でも大丈夫、どうせお酒のせいで赤くなってるはずだし。
 
漢字(かんじ)