やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私が頭に疑問符を浮かべているとさらに話が続いた。

「……ああそう、じゃあ仕方ないね。どうしてもと言うなら私は止めないよ」

 武田常務がちらと私に横目を走らせる。

 えっ、何?

 新たな疑問符がぴょこんと私の頭に現れるのと同時に武田常務が笑みを広げた。

 あ、これは悪い笑みだ。

 確信にも近い直感が私の酔いを醒ます。呼応するように武田常務がスマホの通話を切り、言った。

「もう一人来るけど、いいよね?」

 *

 その人は割と早く来た。

「常務、お待たせしてすみません」

 ちょうど空いていた私の隣の席に三浦部長が腰を下ろす。かなり急いでいたのか息を切らせていた。