やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「大野さんはこのままずっと誰かの下についているつもりかい?」
「えっ」

 思わぬ質問に頓狂な声が出た。

 びっくりした私はきっと間抜け面をしていたのだろう。武田常務が愉快げに口角を上げた。

 さっきの話の流れからすると私を第三事業部の部長にしたいのかな。

 え?

 私、出世しちゃう?

 いきなり部長になっちゃう?

 なんて。

 そんなことないよね。

 私が何も言えずにいると武田常務がくいとお猪口を傾けた。

「君とは年に数回しか顔を合わせていないけど印象には残ってたんだ。君に絡んでいた中森さんと違って華やかさに欠けるかもしれないが、一生懸命なところは伝わってくる。その姿勢は周囲の人間にも良い影響を与えるんじゃないかな。そしてそれがある種の成功に結びつけば、うちの会社にとってもプラスになると思うんだ」
「……」

 ワォ。

 常務、それ買い被りすぎです。