やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 二皿目の焼き鳥が運ばれたあたりで武田常務が切り出した。

「そういや事業拡大の一環として第三事業部を立ち上げようって話があってね」

 実に楽しそうに笑んでいる。彼を知らない人が今の表情だけ見ればとても五十五歳とは思わないだろう。私でさえ疑いたくなるのだから。

「こちらとしてはできればその部長に女性を抜擢したいんだ。理想としては第一か第二事業部の経験があって独自のカラーを出せる人がいい。人事の早見さんみたいに個性がありつつも周囲を纏める力を持っている人にやってもらいたいんだ」