やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「しかし何だか君って可愛くなったよね。以前はそんなんじゃなかったのに」

 不意に投げられた言葉に私の胸がどきりとした。わぁ、何てちょろい心臓なんだろうと自嘲する。

 これ武田常務があまりにも美形だからだ。そうに違いない。

 自分でも苦しい言い訳にすがりつき、私はぐいとお猪口をあおった。熱いものが喉を焼き、身体の芯を温かくする。

 武田常務が訊いてくる。

「恋でもした?」
「……っ!」

 ぎりぎり吹き出さずにいられたが鋭すぎて危険な一言に私は激しく咽せる。

 涙目で彼を睨むとこれまでで一番の笑顔で応じられた。その表情の美しさに喉までこみ上げていた文句が引っ込んでいく。こういうのは何かずるい。