やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 目の前には皿に盛られた焼き鳥と数種類の小鉢の料理、日本酒の二合徳利、それにお猪口。すでに何本かの串は食べ終えており、徳利も半分ほど空荷なっている。

 もう今日の仕事は済んだから、と半ば強引に私は武田常務に誘われてここに来ていた。

 聞けば春からの新規プロジェクトについて第一事業部で話をしていたとのこと。一段落着いたところで私と中森さんの騒ぎが始まったそうだ。

 まあ、騒いでいたのは中森さんなんだけどね。

「ところで」

 お猪口を軽く傾けてから武田常務が訊いてきた。