やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「大野さん」
「あっ、はい」

 振り返ると武田常務のにこにこ顔が出迎えた。ああ、本当にこういうところは新村くんと似てる。

「彼女のこと悪く思わないでね。ああ見えて普段はとってもいい子なんだ。経理課でも後輩の面倒をよく見るし、先輩たちからも評判がいいし」
「……」

 いや印象滅茶苦茶悪いんですけど。

 白い特攻服を着せて木刀を握らせたら立派なレディースが完成しますよ。背中に「喧嘩上等」とかあったら完璧です。

 それともあれですか?

 ちゃちゃっと髪形をいじってから和服で極道の女感を演出しますか? 彼女なら「舐めたらあかんぜよ」ってセリフもばっちり決めてくれると思いますよ。

「……」

 じいっと武田常務が見つめてくる。

 一言。

「君、ものすごく失礼なこと想像してない?」

 私はあさってへと視線を飛ばした。

 言葉にせず謝る。

 ごめんなさーい。