やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「よくもぬけぬけとそんなセリフを。あんたがあたしから彼を奪おうとするからこんなことになってるんでしょうが!」
「……」

 彼を奪う?

 私、そんなことしてない。

 そもそも彼って誰?

「わ、私、他人様の彼氏にちょっかい出したりなんかしないよ。何か誤解してるんじゃない?」

 そう、これは誤解だ。

 ちゃんと話せば私がそんな女ではないとわかってくれるはず。

 彼女の怒声が聞こえたのだろう、廊下に人が集まってきた。面子の大半が第一と第二事業部の部員だ。知った顔があるのでかなり恥ずかしい。

 ひそひそと話しているのは数人の女子社員。これきっと後で噂話のネタにされるんだろうなぁ。

 まあそれは甘んじて受け容れるとして、とりあえず誰か助けてくれない?