やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「この泥棒猫っ、よくも彼をたぶらかしてくれたわね!」
「はい?」

 言われたことがわからず私は目をぱちぱちさせる。喉から漏れた声が頓狂だったとしてもやむなしだ。

 というかこの人誰?

 胸倉こそ掴んでこないが彼女の気迫が凄い。思わずもう一歩下がってしまった。

 間髪入れず彼女は距離を狭めてくる。

「あんたみたいな女は馬に蹴られて飛んで行けばいいのよっ! てかむしろ踏みつけられろ、このあばずれ!」
「……」

 何だかえらい言われようである。

 私が返さずにいると彼女の口撃が続いた。