やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私はどっと力が抜けるような感覚に陥る。どうにか椅子から転げ落ちずにいると優子さんがため息をついた。

「全く、常務もどうせなら私に声をかけてくれればいいのに。今ならお買い得だよ。くっつかないしゃもじのおまけ付きだよ」
「……」

 優子さん、言ってることが意味不明です。

 というかどこかの通販ですか?

 優子さんが目を開けた。

「そもそもこんなに美人でキュートで天使な私が独り身ってどういうことなのよ。うちの会社の男共ってどいつもこいつも目が節穴なんじゃない? まーちゃんにさえ新村くんがいるっていうのに」
「……」

 優子さん。

 自分で天使って言いますか。

 あと何気に私にケンカ売ってます?

 私はジト目で彼女を睨みつつ口を尖らせた。