やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 期待に満ちた優子さんの眼差しにちょっとだけたじろぎつつ私は返す。

「プロポーズなら断りましたよ」
「え?」

 優子さんが目を丸くした。口をあんぐりと開けるおまけ付きだ。

 彼女との温度差を感じつつ私は続けた。

「私、新村くんとは付き合えません。優子さんにはいろいろと気を遣わせてしまって申し訳ないんですけど」
「いやいや私のことはどうでもいいから、それより正気? 相手は新村くんだよ? 他の女の子だったら絶対に即OKしちゃう物件だよ?」
「まあ、そうなんですけど」

 私は優子さんから三浦部長のデスクへと視線を移した。常務との面会の後も会議が詰まっている彼はきっとまだ会議室だろう。主のいないデスクが妙に寂しげに見える。