やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 どうして好きな人の目の前で好きでもない人にドキドキしているんだろう。

 無茶苦茶だ。

 てか、ひょっとして私、新村くんにも気があるの?

 自覚がないんですけど。

 コホン、と三浦部長が咳払いをした。

「あー新村くん」

 苦く笑んだ彼はこめかみのあたりをヒクヒクとさせている。声には妙な圧があった。

「大野が嫌がってるぞ。それにたとえ冗談でも軽々しく求婚するのはどうなのかな?」
「いや部長、別に軽々しくだなんてことはありませんよ」

 新村くんが私との密着を強めた。

 にこやかに。

「俺、本気なんで。大野さんと結婚したいって真剣に思っていますよ。彼女となら百歳になっても一緒にいたい」

「……」

 わぁ、どうしよう。

 私は目眩を覚えた。

 よりにもよって三浦部長の前で何てことを宣言してくれちゃってるのよ。