やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 不意に新村くんが私の腕をぐいと引いて自分に引き寄せた。突然のことすぎて抵抗もできない。やっとの思いで椅子から転げるのを回避した。

 目を見開いた私に新村くんが言った。

「大野さん、俺のお嫁さんになってよ」
「えっ?」

 いろいろと飛び越えていきなりプロポーズですか?

 というか私、新村くんの告白を断ったはずなんですけど。

 彼の体温を感じながらまたぐるぐると頭が回り始める。ぐるぐるぐるぐると回転する思考は摩擦熱を生んでいるらしく私の体温も上がってきた。とくんとくんと打ち鳴らす自分の心臓に情けなくなる。

 私の好きな人は新村くんじゃないのに。

 新村くんじゃなくて三浦部長なのに。