やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 切り分けたコロッケの断面を目にして三浦部長は小さく息をつく。

「なるほど、大野のコロッケはジャガイモをあまり潰さないんだな」
「……」

 部長、すみません。

 それ、潰し損ねただけです。

 胸の中で謝りながら自分のコロッケにパクつく。こちらはちゃんとジャガイモが潰れていた。玉ねぎの量が心なしか多い気もするけど、これくらいならギリギリセーフだよね。

「それにしても、これ玉ねぎが多くないか?」

 アウトだった。

 私は何でもないというふうに装う。あえて三浦部長から視線を外した。

 奥のテーブルで食事している二人って第一事業部の係長さんと営業事務の子だよね。

 ずいぶん仲が良さそうだけど付き合ってるのかな?

 とか現実逃避してみたり。