やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私は続けた。

「それでももし仮に、仮にですよ、部長が海外に行ってしまったらその場所にある名産を毎月送って欲しいですね。あ、そこならではのお酒とかでもいいです」
「君は僕を親戚のおじさんか何かと一緒にしてないか?」
「してませんよ」

 私はにこりとした。

「部長が親戚のおじさんならお小遣いを要求してますし」
「お子様か」

 彼はため息をついた。

「でもまあ、お小遣いくらいいつでもいいぞ」
「えっ」

 彼はそっぽを向いた。耳が赤くなっている。

 早口のせいで聴き取れなかった言葉が気になったがエレベーターが目的階に着いてしまった。急くように三浦部長が降り、私も後を追う。第二事業部までお互い口を利かなかった。