やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

「待たせたな」

 話を終えた三浦部長が私に声をかけた。

 私は思い出の中の北沢さんを奥のほうに押し込んで三浦部長へと意識を向ける。さっきまでの会話が尾を引いているからか彼は顔が赤かった。よほど腹に据えかねたようだ。

 うん。

 私も怒られないように気をつけようっと。

「一時半に常務のところに行かないといけないから少し急ごう。とはいえ、大野のお弁当を味わう時間くらいはあるだろうがな」
「はい」

 会議そのものは十二時を十分くらい過ぎた時刻に終わっていた。

 三浦部長が部下へのお小言マシンガンを炸裂させていなければ今ごろ楽しいお弁当タイムになっていただろう。