きみは幽し【完】






寒いから、せめてもの思いで、
私と周は自販機でココアを一缶買って半分こして飲んでいた。

白色の沈黙が私たちを包む。

さっきから、私ばかりがココアを飲んでいる。瀬戸周の様子がおかしい。だけど、どうしたの?とは聞き出せずにいた。

そうしているうちに、時間だけが流れていく。



「海猫、十四羽目」
「………」
「あ、十五羽目」
「………」


数えても、なぜか、会話が生まれない。

周はとんだ嘘つきだと思っていたら、
「花ちゃん、」と変なタイミングで名前を呼ばれた。


困ったように眉をさげている。
それが、とても、わざとらしかった。



「何だい」
「うん」
「………」


言い出しにくいなら言わなくていい。
全てを聞きたいわけではない。だけど、きみは言うでしょう。


周のわざとらしさは、そのために用意されていたに違いなかった。