海を見ていると、ずっとここにいても許されるような気がしてくる。
だって、もともと私たちは海の一部分だった。どうして、ださい制服に身をつつんでいるのだろうか。生きている、ということも不思議。不思議だから、痛い。思考の輪郭を、波の音は溶かしていく。
周は、隣でマイペースにアイスをかじっている。
だけど、今日の彼はいつもより少し元気がない。
ふす、と笑うし、優しいし、気弱なことには変わりないけれど、周が私を海に誘う時は、何らかの憂鬱を心に抱いているということを私はなんとなく知っていた。
「花ちゃん、」
「どうしたの」
「なんかね、」
夕焼けに焦げていくような声に、思わず隣に顔を向ければ、
周は複雑な表情で私を瞳に映していた。
その向こうに、海猫。今日は、一羽目だ。
それに気を取られそうになっていたら、
とん、とまた周の足が私の足に触れる。
「俺の友達の吉住が、花ちゃんのこと可愛いってさ」
「よしずみ、」
「うん、吉住。知ってる?」
「いや、知らない」
吉住、が女の子か男の子かも正直言って分からない。
多くの人に関心を持つことが私は苦手だ。
首を横に振ったら、周は、なぜか安堵の表情をうかべた。



