その夢をどうしても叶えたくて



私はなーせくんに見送られながら部屋を出て学校に行った。昨日のことがあって、少し心が軽くなった。


確か、レオンくんが行方不明になったらしい。たぶん、午前中は探しに行くのだろう。



昼休みになり、私は早足で保健室に向かった。


「失礼しまぁ……えっ?」


私が保健室に入ると、首を傾げている。そして、顔を蒼白させた。


なぜならば、保健室に生物科の増田先生が居たからだ。なーせくんもすごく気まずそうな顔をしている。


「えっと、君は誰?」


私は彼が話せないことを思い出し、彼のところに駆け寄った。


「彼は、すごい有名な歌い手グループカラスタのリーダーであるなーせくんです。話すと長くなりますが、色々あって私の隣に居るんです。ちなみに、声も出ません」


私の説明に増田先生は眉間にシワを寄せた。そして、微笑んだ。


「なるほどね。私は増田洋一郎だ。生物の担当をしている。えっと……その鱗みたいなのはどうしたんだい?」


彼は私の肩を突っついて、必死にジェスチャーで伝える。しかし、私には全く分からず、首を傾げ続けるだけだった。


「新城さん、ノートとか貸してあげた方が話しやすいかもしれないな」


増田先生がジェスチャーの意味を教えてくれた。私は慌てて現代文と書かれたノートを渡した。私の中ではこのノートは落書き帳と同等で、いつもなーせくんの絵を描いている。


なーせくんは保健室の机を使って、急いで説明を書く。そして、それを増田先生に渡した。


「なるほど……君は新城さんによって変わるんだね」


「えっ?」


私は目を丸くした。昨日は私の話ばかりで、なーせくんのことをあまり深く聞いていなかった。


「君と同じ境遇の人が教えてくれたんだね。彼は新城さんが病んでいくほど龍に進化して行ってしまう極めて特殊な能力を持つ者だね。化け物と言ったり、神と言ったり……その存在の呼び名は未だに定まっていないらしい。君の話を要約するとこういうことだ」


彼の文章を代わりに増田先生が私に教えてくれた。


「そんな……」


私は顔を蒼白させた。自分の心情によってなーせくんが変わるなんて、すごく申し訳ない。


「やはり、君の存在は校長先生に行って認めてもらった方が良いと思う。新城さんの隣に居るべきだ。このままでは君ら二人共壊れるぞ」


増田先生がすごく心配してくれているが、何だか申し訳ない。さすが生物の先生である。


「今日はもう遅いから明日にしなさい。なーせくんはメンバーとしっかり話してきて」


私は増田先生の言葉にうなづいた。なーせくんとは初対面なのにこんなにも心配してくれた。


すると、昼休み終了のチャイムが鳴った。


「じゃあね、なーせくん」


私は手を振って、保健室から出て行った。少ししてから増田先生も出てきた。


「新城さん、彼は本当に興味深い……もっと彼と話したいな」


さすが生物科の先生と言わんばかりに、なーせくんの異常な実態に興奮してしまっている。


「先生、さすがに明日は無理ですよ。もう少ししてからでいいですか?」


「ああ、別に構わない。その前に校長先生の予定も聞かないとな」


増田先生はニコッと笑った。年のわりには可愛らしい笑顔を向けてくる。


「新城さん、君もファイトだよ。じゃあな!」


増田先生は私に手を振って、彼の住処であろう生物教室へ戻って行った。