アウラはそっと、シルウィンの手を握っていないほうの手で彼女の背をさする。
「御者は、風を切ってあなたの声は聞こえません。わたくしも、いないようなもの。いないようなものなのです」
アウラは落ち着かせるようにシルウィンの背をさすりながら、ゆっくりと言い聞かせるように言葉を紡ぐ。しばらくアウラがそうしていると、やがてシルウィンの瞳から、はらはらと涙が流れていった。
「怖かった……。どうしてあんな男にこんな目に……悔しい……。せっかくの、夜会なのに……っ」
シルウィンはぎりぎりと足元を睨みつける。アウラはただただシルウィンに寄り添うようにしてその背中をさすり、シルウィンはそんなアウラに身を預けるようにして、声をあげて泣いた。
「シルウィン様、屋敷に着きましたよ」



