「ほら。着いたぞ」
カーティスは、バルコニーの扉を開くと、シルウィンが出たのを見計らい、己も外へと出ていく。そしてシルウィンの華奢な背中を見て、苛立ちを増した。
(……くそ。どうしてこの女にこんなにも苛立つんだ)
カーティスは、唇を噛むようにして顔を歪める。というのも、カーティスは今日を迎えてから、己の感情に折り合いをつけられないでいた。夜会へ向かう馬車に乗り込む際、シルウィンのドレス姿を見たとき、そしてさっき声をかけてきた時の表情を見たときに、カーティスの初恋であるかつて自分に金糸雀の刺繍をしたハンカチを贈った少女の面影を見た気がしたのだ。
(あの少女はアウラだ。それで正しい。そしてこの女は、俺とアウラを引き裂く王命だけの女。辺境の地で戦いが好きな武力でものを言わせる蛮族に育てられた、自分の身を飾り立てることしかしない女だ)



