マルヴァータ夫人はカーティスの振る舞いに顔をわずかに顰めた。しかし、カーティスはそれが分からず「俺のことは気にするな」と気遣うそぶりを見せたかと思えば、そそくさと去っていく。マルヴァータ夫人は呆れるようにして、シルウィンを見た。
「王命での婚約といえど、災難だったわね」
「ええ。ですが王の命です。この婚儀が国の揺らぎを除くためのものと思えば、国を守るリグウォンの血を引くものとして、私は幸せです」
シルウィンが笑みを浮かべると、マルヴァータ夫人は揃えるように笑った。
「あら、まだ年端も行かない不幸なお嬢さんかと思ったけれど、きちんとしているのね。内面もそのドレスに着られていない。きちんと仕上がっているわ」
「ありがとうございます」
シルウィンがお礼を言うと、マルヴァータ夫人は「実はね」と会場を見渡しながら口を開く。
「私の夫は、貴女の婚儀を決める決議に参加していたの。今日もこの会場に来ているのだけれど、ほら、あそこ。今は王家の方と込み入ったお話をしているから、こっちには来られないのだけれど、ごめんなさいね」
「まぁ……」
マルヴァータ夫人のさす方向には、王家の人間たちと会話をする初老の男がいた。夫人の仮面は、分かりやすく両の目元までを覆う仮面だ。



