首にはドレスにつけられた毛皮と同じ素材を合わせたチョーカーをあしらい、髪は化粧で用いる水晶を粉末に砕いたものをふわりとつけている。現在の流行であるものを下地とし、新しいものを組み合わせたものだった。
そんなシルウィンに惹かれたように、一人の夫人が近付いてくる。濃い紫のドレスを着て、栗色の髪を揺らしながら歩く実年ほどの女性だ。目元は仮面で隠れているが、シルウィンにとって、そもそも夜会に参加して仮面をつけていないように見える人間のほうが少ない。
その姿を見たカーティスはシルウィンに「マルヴァータ公爵の妻であるマルヴァータ夫人だ。失礼のないようにしろ」と即座に耳打ちした。マルヴァータ公爵……それは辺境に住むシルウィンですらその名を知っている。この国の大公の名であった。
シルウィンはカーティスの顔が素顔のままであるところをきちんと確認してから、そっと夫人に目を向け笑みを浮かべる。
「あら、お久しぶりですディルセオン公爵」
「マルヴァータ夫人……お久しぶりです」
カーティスがどことなく居心地の悪そうに挨拶を交わすと、さっそくと言うようにマルヴァータ夫人はシルウィンを見た。そして家名を名乗り、上品に挨拶をする。シルウィンもきちんと手本のような挨拶をするとマルヴァータ夫人はシルウィンを見て目を細めた。



