「お気に召していただけたようで何よりです」
「ふふ。今夜も一緒に湯あみをしましょうね」
現在二人の会話は、向かいに座る護衛、そして今せわしなく馬を操る御者が聞いている可能性もある。よって二人は十分に気を付け会話をしていた。しかし、アウラの脳裏には、先ほどからある疑問が浮かび続けていた。
何故この女は図書館なんかに行きたがるんだ。あの男を落としたいのであれば仕立て屋か香油、装飾品、他にも向かうべき場所はある。何を考えているんだ? アウラは疑問を抱きながらシルウィンを見る。
しかしシルウィンにはアウラが仮面をつけているようにしか見えないため、その表情を汲むことができずただ注意深く見つめるばかりだ。
御者や護衛を何とかしなければ、部屋と違ってまともな会話が出来ない。互いがそう思い、それぞれ窓に目を向けていくと、やがて景色がゆっくりしたものに変わっていった。
馬車が停止したのを待ってから、御者が扉を開く。馬車と煉瓦造りの道には高低差があり、人の手がなければドレスを着たものが降りるのは難しい。護衛がまず先に馬車から降り立ち、「アウラ様」とアウラに声をかけその手を差し出す。そしてアウラをエスコートしながら降ろすと、シルウィンに対しては見ているだけだった。



