【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ



 どんなに大切な家族がいたとしても、最後には国に命を捧げると決めているのだ。そんなリグウォンの領民を、カーティスは蛮族と称したのだ。シルウィンはそれまでカーティスに憧れ、彼を夫選びの基準にしていたが、その淡い初恋は一瞬にして冷め、代わりに煮えたぎるような毒々しい憎悪に変わった。

(あの男、いつか絶対酷い目に合わせてやるんだから)

 決意をもってシルウィンは別邸の外壁を昇っていく。シルウィンは、愛人アウラには何もされていない。そのことを彼女はよく理解しているし、ある日突然壁を這い見知らぬ女がバルコニーから部屋に入ってきたら恐ろしいだろうことが想像できないわけでもない。しかしシルウィンにとって、これは復讐であった。

 復讐には終わりがないなんて言うけれど、関係する者全員召してしまえば完了だわ! アウラも関係者! というのが、シルウィンの持論である。

 バルコニーを目指し、一階から三階までの距離をどんどん上り詰めていくシルウィンは、驚異的な速度により、バルコニーの手すりへとその手をかけようとしていた。あと少し、あと少しでその手が届くと勝利を確信した瞬間。バルコニーから身を乗り出すようにして、部屋の光を背に何者かがシルウィンを見た。驚いたシルウィンは全体重をかけていた手すりからうっかり手を離す。