「ふぅ。可愛いだけじゃない私。最高」
シルウィンは己が出て行きた窓を見て、一呼吸を整える。そして睨むようにして別邸を見た。このまま屋敷を出ても、相手は王家とのつながりも深い公爵。逃げ帰ってきたからと我が家に悪い影響が与えられるのは困る。だからシルウィンは、公爵家が表立って問題にできないような急所、愛人アウラを狙うことにしたのだ。
愛人というものは、別に貴族の中では珍しい話ではない。しかし正妻をないがしろにし、ましてや婚約前からの愛人に重きを置く行為は言語道断、常識はずれの行動であった。愛人に対して貴族は適当に目をかけ、金を出資してその代わりに対価を得るもの。正妻のような扱いを受けることは許されないし、ましてや敷地内に別邸を建て住まわせるなんて、許していい行いではない。
よってシルウィンは、自身の能力を用いて何かアウラの弱みを握り、どうにかして今の現状を打開しようと、とりあえず別邸に乗り込もうと考えていたのである。
かといって、乗り込んだ後は何も考えていなかった。シルウィンにはある種冷静に物事を考える用心深さがある時と、「その時はそのとき」という楽観的思考が混在している。その思考は「自分を誰も可愛がってくれない」というシルウィンにとって極度の精神的負担と怒りが溜め込まれた状況により、極度なものへと変化しているのであった。



