【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


「よいしょっと」

 シルウィンは夜着の裾を結び、身なりを整えた状態で、窓枠にその華奢な足をかけている。シルウィンの使用する部屋は二階にあり、地面までは結構な高さがあり、本来であれば恐怖に震える所だが、シルウィンの心は怒りに震えていた。

 自分がどうしてここまでないがしろにされて、黙っていてはいけないのかと。いっそベッドを解体して、武器を作り、公爵を襲うという妄想をすることもあった。

 しかし相手は公爵家。そして使用人は全員信用できない。きっと自分が悪く扱われるだけだ。そう判断したシルウィンは、別の作戦を立てたのである。

 本来彼女は己の可愛さを磨くことだけを考え、野蛮な行いは好まない。しかしそれは相手がきちんと誠意を持って接するのであるならばの話であった。シルウィンは己をないがしろにし、馬鹿にする存在を何より憎んでいる。シルウィンは自分が好きだ。自分が好きだからこそ、自分を傷つけようとする人間にはその敵意をむき出しにする。

 よって本来窓から屋敷を出るなんて行動は、シルウィンにとって「恥」に分類されることであるが、シルウィンは「今は夜。夜だから誰も見えない。私しかわからない。そして私は私を許す!」という鉄の意志を持ち、今まさに屋敷の壁を伝い、脱出を果たしたのだった。