【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 ローウェが隣に立つと、シルウィンは「見て、小さい子が手を振ってくれているの」とある家族連れを指し示す。

 こちらに手を振る動作を行う、紅を含んだ暗い朽葉色の髪をした、まだ立つことも覚束ない女の子。そして同じ髪色をした母親らしき人物が抱くのは黒い髪をした幼子だ。そのどちらの子供も嬉しそうに船に手を伸ばしている。

 そして赤子と同じ色の髪をした男が、妻であろう幼子を抱く女の肩を抱き、もう片方の手で妻と同じ髪色をした幼子の手を掴んでいた。そうしていながらも、視線は不安げにおろおろと幼子が転ばないよう気を配っていたかと思えば、周囲に危険がないか鋭い視線で警戒することを繰り返す。

 端的に言えば不審な人物だ。

 しかしその人物を見つけたとき、ローウェは黙ってシルウィンの肩を抱き、そのまま連れ去るように船の内部へと連れていく。

「ちょっと! 私まだ手を振っている途中だったのだけれど」
「うん。いいから、子供が生まれて余計気が立ってそうだし、船ごと燃やされたくないから。せっかく新しい門出なんだし、きちんと隣国に着きたいしね」

 ローウェは淡々とシルウィンを船の奥まで連れていき、ここまで来れば安心だろうと息を吐いた。その瞬間船の出港を知らせる笛が鳴り、シルウィンは「ああーっ」と声を上げる。

「せっかく、出港の瞬間に立ち会えると思ったのに!」
「それは隣国を出発する時に聞こう。隣国ならゆっくり聞けるはずだから」
「私はここの出発の時の笛が聞きたかったのよ」
「うーん、じゃあリグウォンに戻って、何年か経ったら旅行に行く?」
「ならまぁ良しとしましょう」

 ふふんとシルウィンは上機嫌に笑った。ローウェはそんなシルウィンをじっくり見つめるようにしてから、そっとその唇に口付けを落とす。