【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 ローウェはシルウィンと出会ったころを思い出す。バルコニーから物置部屋の景色はよく見えた。そして物置部屋からこちらを覗く、闘志を燃やすシルウィンの目もよく見えていた。いつか乗り込まれるとは思っていたものの、まさか壁をよじのぼってくるとは思っていなかったなと、ローウェは思い出し笑いをした。

「どうした、この先が楽しみで笑えてきたか?」
「ええ。将来は楽しみですよ。でも今までは、人をどうやって殺すかしか考えていなくて、だから、どうやって幸せにするか頑張って考えようと思います」
「いい兆候だな。死んだような目だったお前が生き生きとしている。友として嬉しい限りだ。隣国も情勢が落ち着いた。呪具も存在しない。実に晴れやかな門出だ」

 ダリウスは、今までの心労から解放されたように伸びをして、くるりと踵を返した。

「ああ。さて、あんまり長居しすぎても良くないな。この地にはめざとい領主もいる。子が出来てより過保護が酷くなったと聞くし、王都から細菌を持ってきたと言いがかりをつけられ燃やされる前に早めに退散するとしよう」
「お元気で」
「……ああ。ここまで良くやってくれた。お前には感謝している」

 ダリウスは闇に身を潜めるように雑踏へと消えていく。それを見届けてローウェが踵を返しシルウィンのもとへ向かうと、シルウィンは船着き場の近くで屋台が並ぶ通りで買い物を楽しむ人々に手を振っていた。