【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 しかしその空気を一変させ、迅速に避難誘導をして、招待客や使用人が速やかに屋敷から出られるよう立ち回ったのが、シルウィン・リグウォンであった。

 彼女は、きちんと招待客を避難させ終え、自分も逃げようとした矢先、屋敷に火を放った女が煙に苦しみ倒れているのを見つけ、その女にまで助けを差し伸べた。そして彼女は自分を探しにきた者たちに女を預け、自分は裏道から逃げるから、先に逃げてほしいと伝えたのだ。自分の姿が見えなくても、裏手で屋敷の炎が消されてから向かうから、探しに来ないでと。

 本当は裏道なんてなかった。

 どれだけ待っても、炎で崩れゆく屋敷の中からシルウィンが逃れることは出来なかったのだ。屋敷を覆う炎が消火された後、裏手に回った者たちが見たのは、黒く焦げた瓦礫の山。避難をする場所だって、残されていなかった。カーティスはそのころ、自分だけさっさと逃げていたというのに。

 彼女の死体は、屋敷から出てくることはなかった。その骨すら残らぬほど炎に焦がされ、失われてしまったのだと人々は彼女の死を悼んだ。そして彼女に救われた使用人たちは言ったのだ。自分たちは彼女に酷いことをしたのに、彼女は自分たちの命を救ってくれたと。それを最も熱心に伝えたのは、屋敷に火をつけた女であった。女は牢に捕らえられてもなおシルウィンの生存を望み、神に祈りを捧げ続けているという。