「シルウィン様、湯あみの支度が出来ております」
「……今行くわ」
シルウィンがディルセオン家に訪れ、十日。シルウィンは侍女に促されるまま、浴場へと向かう。天井には蜘蛛の巣が張り、温められたはずの湯はもはや水で湯気の代わりに油が浮いている。石鹸や髪の汚れを洗い流すものも、髪を乾かす際に整える香油も置かれていない。
シルウィンはディルセオン家に来てから、ただ、ぬるま湯と水の狭間のような水ではない何かを油が入らぬようすくって浴びて、出ていくことを繰り返していた。
リグウォンの屋敷でシルウィンはまず先に髪を洗い、香油を塗り丁寧に布でまきそのあとに顔を洗い丁寧に保湿をして体を洗い、肌にいいというハーブを浮かべた湯に数時間浸かる生活をしていたが、この屋敷では肌を湿らし乾かすこと自体が毒になりかねないと、シルウィンは手早く済ませており、今日も同様にいつも通りの手順を済ませてすぐに浴場から出ていく。
浴場の外でシルウィンを待っていた侍女は冷たい眼差しでシルウィンを見やり、部屋へ戻るよう促した。部屋に戻れば、侍女はすぐに扉を閉じる。相変わらずカビ臭いその部屋の匂いに、シルウィンはため息を吐いた。



