「あれも、俺が共謀した。メアロード家の当主は、吸血鬼の中でも力が強くて、唯一呪具を破壊できる力を持っていた。でも言ってしまえば手負いの獣に近いところがあって。そんな時、王太子が男爵家の令嬢と恋に落ち、公爵家の令嬢に婚約破棄をした。そして没落した元男爵家の令嬢の妹が、メアロード家の当主に見初められたことを知ったんだ。だから、それを利用した。王城に軟禁された王太子と元男爵家の令嬢に、妹はいい生活をしていると伝えて、王家の呪具を使って脅して、金を巻き上げればいいとそそのかした。そして、俺はメアロード家に勤める妹をさらいやすいように、環境を整えてやった。メアロード家の当主とは、友達だった。男爵家の令嬢の妹が、その姉に相当酷いことをされてたということも知っていた。あの二人は、ただ幸せになるべきだったのに、わざわざ俺が、危険な目に遭わせた」
「でも、その妹と、メアロード家の当主は結ばれたのでしょう?」
「そうだけど。運が良かっただけだ。少し違えば、俺のせいで両方死んでいた。そして死んでいたとしても俺はきっと次の日から、仕事をしていたよ」
吐き捨てるようにアウラは話す。その声色に、シルウィンは己の胸が軋んでいくのをはっきりと感じた。今までアウラは、傷ついてきたのだろうと、怪物になり損ねて生きてきてしまったのだろうと、アウラの瞳を見つめた。アウラの瞳は、まだ見えない。しかし子供の落書きのような、呪詛を書き散らかしたようなその仮面の線は薄れ、もう目元を覆い隠すだけになっていた。



