そう言いかけて、アウラは口をつぐむ。そして息を吐いて、「隣の町の人間は、みんな人間なんだ。俺の村と違って、吸血鬼じゃない」と話を続ける。シルウィンが静かに見守っていると、そうして話を続けるアウラの仮面に亀裂が入り、崩れ始めた。
「でも俺は吸血鬼だった、血を求めるしかできない。村では牛や馬を育てて血を飲んだり、十日に一度死体が運ばれてみんなでそれを分けてたけど……町にはそんなものはなくて。俺は飢えて、そのうち町の子供の一人に噛みついて、追い出された。どこにも行き場なんてないのに、どこかへ行くしかなかった。ただ歩いていると、今度は布教活動で転々とする宗教家に拾われた。その教会に引き取られたんだ。もう、そこで暮らすころには自分は血を吸うことが普通じゃないって分かってたから、夜に周りの猫や犬、家畜を襲ったりしてた。そして教会で、村で見た紋を見つけたんだ。神父に問えば、その紋章は王都の公爵家であれば誰しもがつけることを許されているって、言ってて、俺は王都の公爵家を調べれば、きっと家族が、村の人間がどこに行ったのかが分かると思った」
シルウィンは、その紋章の成り立ちに覚えがあった。王家の紋章は、大きな紋の周りに葉を伝うように囲う絵が記されている。そして公爵家の紋章に限り、同じように家々の紋の周りに葉を囲うように描くことが許されている。しかし、王都の公爵家といえどその数は計り知れない。シルウィンはこれからアウラの口から聞くであろうそれまでの来歴に、胸を痛めた。



