「俺には愛する者がいる。ただ彼女は平民で……しかし真実の愛に身分など関係がない。だから婚姻を結ぼうと力を尽くした矢先、リグウォンなどという戦いしか能がないような果ての蛮族血統……お前との婚姻を結べと王家に言われたのだ。よってお前はどうであれ俺は望んじゃいない。名義上お前は俺の妻になる女だが、俺が愛するのも、世継ぎを生むのも全ては、この窓から見えるその別館に住むたった一人の女性、アウラだ。お前ではない。だからお前は不用意に俺に近づかず、この薄汚れた部屋でただ大人しくしていろ」
カーティスの言葉が、シルウィンの頭の中へと入っていく。カーティス様には、愛する者がいる? それは愛人では? 嘘だと疑っても、シルウィンの目にはカーティスの顔そのままが見える。そしてシルウィンの頭の中が混乱に襲われ、次の言葉が紡げない間にカーティスは部屋から立ち去り、威圧や苛立ちを与えるようにして扉を力強く閉めた。
シルウィンはたった一人、じめついた部屋で、ただ呆然としていた。



