「裏手の逃げ道なんて、ないけれど」
シルウィンの背後には、天井を飛び越すような火の手が迫っている。先ほど女を抱え通った道も揺らめくような炎の色で埋め尽くされ、もう景色すら把握できない。
けれどシルウィンは、死ぬ気なんて毛頭なかった。手短な瓦礫を手に取り、その熱さに手を焼かれながらも炎の埋め尽くす壁に向かって投擲し、壁を破壊して道を作っていく。
「ふん! 道がないなら、作ればいいのよ」
そうして、シルウィンは壁を破壊して、進んでを繰り返す。しかし徐々にシルウィンの喉は焼け、呼吸もし辛くなってきた。
いっそ天井を破壊したほうが良かったかもしれないと彼女が天井を見上げると、ただ同じ橙色の景色が広がるばかりで、少し離れたところには炎の渦が巻いていた。
何度も何度も熱を感じながら壁を破壊することを繰り返していると、ふいにシルウィンはふらつき、尻餅をつく。立ち上がろうとしても、頭がぼんやりとして力が入らない。



