【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 女はそう言うと、燭台を叩き付けるように下に落とした。すると油が引いてあったのか、小さな火は瞬く間に炎へと変わり、会場を包んでいく。女はその惨劇ともいえる光景を見て、狂ったように笑い出した。同時に窓の外からも火の手が迫り出し、女を囲うように炎は風にあおられその勢いを増していく。

「あはははは! 燃えてしまえばいいのよ! すべて! すべて消えてしまえ!」

 狂った女の呪詛の言葉、そして自分たちを取り囲む炎に招待客は一気に混乱に包まれた。カーティスもそれは同じで「そんな、ばかな」と繰り返しただ立ち尽くしている。シルウィンはすぐにシアンを呼びつけた。

「あなたは別邸、そして本館のこの会場外にいる使用人にこのことを知らせ、避難させて頂戴。おそらく屋敷の周りにも火が回っているはずだわ」
「はいっ」
「皆さん落ち着いてください! 私の指示に従ってください。そうしたら死なないわ! 絶対に怪我もしない! だからここに集まって、出口はこっち。走らないで前にいる相手と少しだけ距離を持って進んで! それが出来れば絶対に早く逃げられるから。走って誰かが転べば、全員の退避が遅くなるわ! 使用人たちは皆さまが迷わないよう周りを確認しながら誘導して避難をして! 外に出たら戻らず安全なところで集まっていて頂戴!」

 混乱していた会場内にシルウィンの声が響く。使用人たちははっとして、招待客の避難誘導を始める。すると招待されていた騎士の男たちがシルウィンへ向かい手伝いを申し出てきた。

 シルウィンは屋敷への順路を伝え、迷う人間がいないか見ていてほしいことを頼むと騎士たちは速やかに向かっていく。会場内の人間は落ち着いて避難をはじめ、カーティスも紛れるように屋敷の外へと逃げていく。邪魔になるよりましかとシルウィンは考え、そのまま会場内に誰もいなくなったことを確認していき、はっとした。

(炎を放ったあの女がいない)