【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 侍女はまるで感情の込められていない声で発し、シルウィンの返答を待たず部屋を退出し扉を閉めた。シルウィンは唖然としながらも扉から部屋に向け周囲を見渡す。

 薄汚れた、壁。染みの付いた天井と床。机と椅子が窓際に置かれているが、そのどれもに埃が積もっている。ベッドは片方の足が歪に沈んでいるのが目に見えて分かるほどで、枕もシーツも、窓の左右にまとめられたカーテンですら黄ばんで模様を作り出しているようなありさまだった。

 極めつけは部屋に充満する匂いだ。まるで部屋の空気の入れ替えを何年も怠っていたかのような、湿っぽいだけでは済まされないカビ、そして薬液のような匂いが部屋の中を包んでいた。シルウィンがたまらず窓を開こうとすると、さび付いており固く動かない。シルウィンは体に力を籠め。無理やりあけ放つと歪な音を立てて窓は開き、まるでその代償のようにシルウィンの手のひらは油や黒い塵でべったりと汚れてしまった。

「何ここ……」

 シルウィンがぞっとしたように呟くと同時に、扉を開く音が響く。慌ててシルウィンが振り返ると、ドアノブに手をかけ部屋の前に立つ人物に、彼女はその胸の鼓動をひと際強く跳ねさせた。